書評:あたらしい戦略の教科書
『あたらしい戦略』の教科書ではなく、あたらしい『戦略の教科書』である。お間違えの無いよう。表紙をみると一目瞭然ですが。
耳障りのよい戦略ではなく、結果の得られる戦略にフォーカスされた教科書である。
まずは情報の分析
得られる情報には、ドライ情報(事実ベースの情報)とウェット情報(人づての情報)がある。この両者の情報間での食い違いこそが、分析すべき情報である。
そのためには、ウェット情報をインタビューで集めなければならない。
インタビュー
まずはドライ情報を集め、自分なりの切り口で付加価値をつけウェット情報としていく。その情報をもって人にインタビューする。そして、この本が秀逸なのはインタビューの目的をずばり、
- うっかり『口を滑らせる』こと
と定義していることである。これは明快。口が滑った情報こそ大事なウェット情報である。
インタビューの結果として、相手から「この話は私に聞いたとは言わないでください」と言われれば、インタビューは大成功です。
こんなインタビューをするテクニックも少々載っているが、意地悪なものはない。その辺が著者の人柄がにじみ出ているところなのだろうか。
戦略家にとって大事なこと
戦略家=リーダーとして解釈してもらっていいと思う。
- 戦略家にとっての楽しみは戦略全体のドライブ
- したがって、「成果」は政治的なツールにすぎない。
- 例えば、最も政治的に離れた人の手柄としてしまう。
- そうすることで心理的な「貸し」を与え、協力者を増やす。
- 心理的につらくても、決して成果を戦略家自身のものとしてはならない。
心理的満足と、目的達成の満足はわけて考えられるクレバーさを持ちたいものです。
相手を説得するには
戦略の実行には他人を説得することが必要になります。人を説得するには、相手に応じた説得方法が必要です。では、その「相手に応じる」ためにはどうすれば良いでしょうか。
その一つの方法として、人を「自己主張の強さ」と「感情が表に出るかどうか」の2軸で、以下の4つのタイプに分類する方法を紹介しています。
- コントローラー:人も場も支配したい
- プロモーター:人に影響を与えたい
- サポーター:人間関係が大事
- アナライザー:冷静沈着で客観視
4タイプ分け
4つのタイプに分けるという話は、こちらの本に簡単にまとまっています。
私も読んでみましたが、「人は4つだけに分けられるのか?」という点については、もちろんそんな単純ではなく、4つのタイプのどこに比重があるか、という観点で相手を観察し対応を考えようという趣旨でした。内容はけっこう言い得て妙の感があり、さらっと掴んでおくと人への応対が上手になると思います。
さらに、自分がどのタイプなのか知りたい方は、以下のサイトでテストできます。
有料テストなるものもあり会員登録を一瞬躊躇するのですが、4タイプ分け診断テストは無料ですので興味がある方はぜひお試しください。ちなみに、私は「プロモーター」のタイプが強いという結果で、自己評価と同じ結果でした。